神奈川県高等学校教育会館 県民図書室
書誌情報 

   

雑誌番号 8
請求記号
雑誌名ヨミ キョウドウジクウ
雑誌名 共同時空 NO.88
編著者ヨミ
編著者
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出版地
出版者 神奈川県高等学校教育会館 県民図書室 
通巻番号
年月号
刊行年月日 2013/10
雑誌コード
特集記事 共同時空 No.88


「ワークショップ表現教育」10年目を迎えて
~政治が教育に土足で踏み込む時代に抗する~

久世 公孝

 本年度、県高校教育会館「教職員のための夏季教育講座~ワークショップ表現教育~」が開講10年目を迎えた。「夏季教育講座」は、2003年度に10年計画で企画され、昨年度事業が終了したが、会館一般法人化にともなう「公益事業」として今年度試験的に継続をしている。
 「夏季教育講座」は、「新教育課程の本格実施にともなう『総合的な学習の時間』や新教科『情報』の導入」への対策として企画されたものであり、今日的教育課題に関する連続講演会も毎年開催しているが、「学習は主体を育てる参加型で」という高校改革に対する神高教方針を反映し、コミュニケーション教育・開発教育・環境教育などのワークショップ講座、パソコン講座等「生徒参加型授業」に資する研修を主体に考えられたものであった。しかし、ワークショップ講座は徐々に姿を消し、数年前からは「表現教育」のみとなってしまった。
 「表現教育」は、「演劇手法を活用した生徒参加型コミュニケーション教育」の開発を目的としている。2003年度から2009年度の7年間ファシリテーター派遣を劇団文学座に依頼し、様々な俳優・演出家、特に演出家望月純吉氏のお世話になった。2010年度の休止を経て、狭義の「演劇」に拘泥せずより教育活動に汎用性の高い内容を希求して、2011年度から2013年度の3年間は、教育ワークショップで全国的に活躍するNPO法人演劇百貨店から大西由紀子氏を派遣して頂いている。しかし、開講から数年間は参加者数延べ100名弱(5日間開催)であったものの、漸減して、今年度は延べ30名弱(4日間開催)に減じている。
 生徒参加型授業の学校設定科目構築・運営や既成科目へのファシリテーション技法導入が学校現場に定着し、ワークショップ講座はもはや役割を終えたのであろうか?
 2009年11月14日の教育研究所・教育討論会「再編の10年・その到達点を探る」に参加し、『ねざす』45号(2010年5月)に寄稿した。頂いたテーマは「体験的・課題解決的な学習~系・系科目~について」である。
その原稿を一部引用する。
 「(日教組の)教育課程自主編成運動は、総合学習を『学習指導要領に空いた風穴』と位置づけ、学校裁量権を最大活用しての、平和・人権・環境など教育実践を提唱した。『自ら』『主体的』を繰り返し主張する教育活動では、内容や展開について、教職員から児童生徒へは勿論、教育行政から学校へもトップダウンで指示をする方式は不可能である。むしろ教育研究での共有化を経て、教育実践をボトムアップしていく方に理がある。
 特色科目の存在意義は、総合学習と同じではないだろうか。特色科目は、詰め込み教育から脱却し、分かる、楽しい、剥落しない学力が付く授業をおこなうことに意義がある。しかし、それだけではない。私たちは、やらせタウンミーティングなどが明らかとなりつつも、数の暴力といってよい政治的な圧力によって教基法を改変させられた歴史を持つ。今日は、いつでも政治が教育に土足で踏み込んでくる時代である。教育のシステムの中に、教育施策の『全体主義化』を阻止する要因、学び合いを必然化するとともに特定の価値観の注入を無力化する授業展開を配置しておくことは重要である。」
 今夏、私たちは「政治が教育に土足で踏み込んでくる」ことを実感した。神奈川・東京・大阪・兵庫の都府県教委は、文科省検定済み実教日本史教科書に対する排斥指導をおこなっている。埼玉県では、8校の採択に対する県議会文教委員会の再審査を求める決議に抗した教育委員長が辞意を表明する仕儀となっている。市議の圧迫にもとづく横浜市教委による地域史副読本回収・改訂、松江市教委による「はだしのゲン」閲覧制限など、中教審答申による教育行政独立性弱体化(首長コントロール強化)も加われば、こうした動向は今後ますます加速していくことだろう。
 今、教育現場でなし得ることは、日本学術会議「新しい高校地理・歴史教育の創造」(2011年8月)に示された、「歴史基礎」「地理基礎」の提言を推進することである。これは、2006年の世界史未履修問題を契機として、「従来の歴史知識の教授に偏る教授法を改め、歴史的思考力の育成を図る」また「系統地理的な知識や見方を活用して、現代の世界的課題や身近な地域の地域的課題に興味が持てる」ために、主題学習・調べ学習・グループ研究等を重視する内容を持つ。しかし、現行の世界史必履修を廃して新たな必履修科目を設定するに至る途は遠い。が、学校設定科目の中で同様の実践をおこなうこと、必履修を含む既成科目にその方法論を波及させることは十分に可能である。
 しかも、このとりくみには大義名分が立つ。探究型学習の方向性は、PISA型学力向上にインスパイアされた文科省基本方針、「学力の三要素」に「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」を掲げ、その育成のために「言語活動充実」を2013年度からの新指導要領の柱のひとつとする「生きる力」路線と一致する。
 「表現教育」は、直ちに「歴史的思考力の育成」等に資するものではないが、「学び合いを必然化するとともに特定の価値観の注入を無力化する授業展開」の最たる実践である。文科省コミュニケーション教育推進会議審議経過報告(2010年8月)、県教委神奈川教育ビジョン(2007年8月)に「演劇の活用」の有効性が記されており、新指導要領国語科には、「脚本化」(国語総合)「演劇教材化」(現代文A)が明示され、既成科目への方法論波及の足がかりとなる。キャリア教育「基礎的・汎用的能力」にも直結する。
 しかし、一方で、教育再生実行会議は10月に「高校到達度テスト導入・センター入試廃止」を提言している。これは、バカロレアではなく高校版ア・テスト導入であり、ペーパーテスト重視・知識技能偏重による注入式授業への「回帰」が危惧される。注入式授業は、特定の政治的スタンスの強要を容易にする。同時に、「神奈川の教育を考える調査会」最終報告(2013年8月)には、新タイプ校の「教育課程の再編」が盛り込まれており、学校設定科目の整理にともなう生徒参加型授業の減少・消滅が懸念される。
 再度問う。生徒参加型授業の学校設定科目や既成科目へのファシリテーション技法導入は学校現場に定着しているのだろうか。もし、そうでないならば、あまり時間はない。今後予想される厳冬の時代において、私たちの最大の武器は教育実践であることを確認したい。
(くぜ きみたか 県立横浜桜陽高校)


学校図書館は、今・・・

星野 好美

日常の授業利用
 私が勤務している学校は普通科のコース制で、2・3年生は一般・国際・美術の3つに、現在の1年生からは一般・美術の2つのコースに分かれている。美術コースの生徒や、他のコースで美術系科目を選択している生徒は、授業時間中に作品制作のための参考資料を求めて個々にやってくることがよくある。「海の中の写真がほしい」「薔薇の絵をなるべくたくさん見て、どれがいいが比べたい」「鯉の滝登りの絵、かっこいいやつ」「○○の展覧会にあった絵」「水が落ちた瞬間の写真がほしい」「ぎざぎざにとがった物が林立している状態を描きたい。参考にできるものを」「とにかくなんか描きやすいやつ」など、探しに来る対象は様々だ。そんな時に活用される本やインターネットなどの資料は、授業だからこそ使われるというものも多く、休み時間等の生徒の自由利用の対応とはまた違った楽しさがある。その時のやりとりを参考に、その後の選書を考えたりもする。

声のかけ方は難しい
 生徒が何かを調べにやって来た時、どのように声をかけるのがいいのだろう、どのような対応がいいのだろうということを、つい考えてしまう。ひとまず「何か手伝えることがあれば手伝うから、声をかけてね」などと伝えてみて、その時点で「○○が載っている本ありますか?」などと返してくれる生徒には、一緒に書架まで行って本を提示してみせたり、該当する書架を教えたりする。特に何も依頼してこない生徒については、ちょっと離れた所から様子を見守る。しばらくして、頼まれはしなかったけれど困っていそうだなとか、途方にくれていそうだなという子には、「何を探しているの?」とか「見つかりそう?」などと聞いてみる。複数の生徒がいる時にはひたすら声かけと指示、様子見を繰り返す。また、ちょっと羽を伸ばし過ぎてのんびりしちゃってるかなと思う生徒には、重くなったお尻をあげてもらう促しもしたりする。 声のかけ方は難しい。調査の援助をするために学校司書がいると理解してもらいつつ、どんな風に声をかけたら良いのか。むしろ今このタイミングでは声をかけないほうがいいのか。どこまでをはっきりと情報を提示して、どこからは生徒自身で考えるよう仕向けるべきか。司書が答えるのではなく、担当教員に質問に行くように促したほうがいい事柄かなど。日々ひそかに迷いながら声かけをしている。

退館後が気になる
 生徒の退出後、あれで大丈夫だっただろうかと心配になることもある。授業時間中に探しているものが見つからなかった生徒や、資料を見つけた様子もなく司書とも一言もかわさないままスーッと教室へ戻ってしまう生徒、「無かったから、いい。自分でなんとかする」と言って出て行く生徒。生徒の多くは、その授業時間中にとりかかる制作のために来館することがほとんどなので、そういう子が同じテーマでもう一度来館することは、ほぼ無い。だから後ろ姿を見送りつつ、モヤモヤとすっきりしない気持ちが残る。
 図書館で調べた時間が生徒にとって本当に実りあるものだったかどうかは、司書よりも図書館から戻ってきた生徒の様子をみている授業担当者の方たちのほうがよくわかっているのかもしれない。だから時々、「あの子、あの資料で大丈夫でしたか?」と聞いてしまうのだが、教員の方から図書館についてのフィードバックをしてもらうことも大切だと思っている。(県立白山高校学校司書県民図書室資料選定委員 ほしのよしみ)


書評と紹介

編「外国につながる子どもたちの物語」編集委員会/まんが みなみななみ
『まんがクラスメイトは外国人 入門編 -はじめて学ぶ多文化共生-』
明石書店 2013年5月刊

 いつも明るく活発なブラジル出身の女の子「リサ」、物知りでしっかり者の男の子「伊藤」、そしていろいろな国の文化や言葉そして問題を抱えた同級生たちと戸惑いながらも前向きに接していく女の子「歩夢(あゆむ)」。そんな彼らが入学した中学校が物語の舞台である。
 国によって異なる文化や風習が元になる事件が思春期の多感な子どもたちを待ちうける。ベトナム人の母親をもつ「グェン」は、ニンニクの効いた弁当が臭いとからかわれる。日本語の日常会話には不自由のないブラジル出身の男の子「アンドレ」は、定期テストで問題文の意味を理解できず散々な結果となる。転校生「ミーナ」が住んでいたインドでは、掃除は違うカーストが行う作業であった。
 物語のもう一つの舞台であるリサイクルショップ「ともきや」では、学校以外で起こる様々なトラブルや取り組みが、ショップオーナー夫妻の活動を中心に紹介される。自己責任という考え方やゴミの捨て方などマナーやルールの違い、義務教育における入学・進級の対象年齢の壁。そして入管法による強制収容・強制送還は、日本も加盟している「子どもの権利条約」でうたわれている人権を奪っていく。
 物語の最終章は卒業式。中学校生活最後の日を迎える伊藤はある決心をする…。
 中・高・大の教員がメンバーである「外国につながる子どもたちの物語」編集委員会が、前作『まんがクラスメイトは外国人-多文化共生20の物語-』の出版から4年を経て新たに製作した姉妹編である。前作同様、イラストレーターみなみななみ氏による優しいタッチのまんがで、全20話が各章8ページでまとめられている。
 内容的には前作に続く「続編」ということではなく、より子どもたちにも読みやすい内容にするための工夫がなされた「入門編」である。各章が1話完結で物語にまつわるデータやことば等の解説に2ページを割くという前作の構成を改め、章ごとの解説をなくし、また全体が一つの物語として読めるようなストーリー性を持たせている。
 「外国につながる」とは家族のルーツや背景に日本以外の地域がある事を表している。そしてこの編集委員会のメンバーは神奈川県で教育相談や補習教室、交流会などを担っている先生方である。関わってこられた数多くのエピソードを20話に絞り込み、さらにそれぞれを8ページという限定された紙面におさめるためには大変な御苦労と苦渋の選択の連続であったに違いない。前作においても、重版の際には登場人物のセリフや解説で触れられるデリケートな部分についての議論を重ね、引用や表現の差し替え等を行ったとのことである。
 悲しいことだが、外国につながる人たちに対してなされる心ない言動や行為は、どのような社会においてもなくなるということはない。このことは経験的にも明らかであるし、たとえば聖書が「在留異国人」を守る立場を強調していることからも逆説的に裏付けられている(みなみななみ氏ブログより)。だからこそこの本を手に取って欲しいのは、フツーの中学生・高校生である。
 この物語で取り上げられるエピソードは、その一つひとつは現実に起こっていることであり、しかも現実には物語のようにポジティブに解決することがとても難しいことであるということは中学生・高校生ならば理解できるはずだ。同時に、外国人を差別するつもりのない多くのフツーの人にとって、知るべきこと・考えるべきこと・なすべきことがとても多くあるということにも気づくことができるだろう。そして、これまで知識としては受け入れていた文化の相違に、歴史的背景に、日本社会に現存する制度的な問題に、そして外国につながる人たちが今現在抱えている問題に少しでも興味や疑問を感じられたならば、さらに続けて前作を読んで理解を深めて欲しい。ぜひクラスで、授業で、部活でご紹介いただきたい。
(県立鎌倉高校 県民図書室資料選定委員 小板宏之)


荻上 チキ 著

『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』
幻冬舎 2012年11月刊

 新鋭若手評論家として、古市憲寿、東浩紀、津田大介etc…らと名を並べる荻上チキ。この最近話題の若手評論家達の中でも荻上チキは比較的若い方(今年度32歳)で、実は僕と同年齢。その意味では、同じ時代を生きてきた彼の視点、感覚というものには大変興味をもてるところだった。
 そもそも、この『いつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』というタイトルに滲み出る、著者のちょっとしたイラだちというか、危機感のようなものが僕を惹きつけた。“ はじめに” では、「他人の提案に対し、延々とダメ出しを加えるだけではなく、もっとこうしたほうがいいと提案し合う議論を加速させなくては、もうこの社会は持ちません」、「ポジ出し(=ポジティブな提案を出すこと)が不可欠」と語りかける。僕自身「そりゃそーだ」と素直に思うし、同様に感じる方も多いかもしれないが、ふと周りを見渡せば案外そうではないシーンによく出くわすのが実際なわけで。そういう意味で、本書は様々な情報や議論が飛び交うこの社会に、どう向き合い、どのように議論、とりくみを展開していくかを改めて見直すには、よいヒントが散りばめられているのではないかと思う。
 本書では、戦後復興期後、「高度成長期」→「安定成長期」→「低成長期」と鈍化してきている経済的背景の中で、政治でも55年体制の崩壊をはじめとした構造や質の変化が起こり、財政的には「配り合い競争」から「削り合い競争」の時代へと移行している事を前提として確認している。加えて、これまで議論や運動を展開してきた世代と、彼(僕)の世代以下とでは生きてきた時代背景が異なること(≒思考の前提)も指摘している。これは僕自身も思うことで、現実的に「これまで」と「これから」を如何に繋ぐかというのは、今もこれからも自分自身の課題になり続けるのだろうと思っている。
 そうした前提のうえで、著者は、制度を分析するための視点や政策の是非を判断するための視点などを、実例を挙げながら説明し、社会の輪郭と問題点をわかりやすく明らかにしていく。そして、議論を展開するうえで、これまである程度リアリティをもって成立していた、「自由主義⇔社会主義」、「右派⇔左派」、「保守⇔革新」、「小さな政府⇔大きな政府」、「頭でっかち⇔心でっかち」…etcといった対立軸の多くは、世界的な社会情勢の変化の中でスライドしてきているとし、今この現在(これからずっととは言っていない)は、そうした大きな政治思想ベースではなく、「縮退モデル」を受け入れたうえでの現実的な技術的、政策的議論が重要だと指摘する。これは僕としても胸に落ちるものである。決してこれまでの歴史、議論を軽視するわけではない。これまでの経緯も踏まえたうえで、今現在の問題を広く議論する=世代を超えて議論を拡げていくには、必要な視点であると思う。今、若い世代にも社会のことを考え、関わろうとする人達がたくさんいる。ただ、身近なところから学びを深めていこうとしているところに、突然大きな政治思想が降ってきて、そこで腰が引けてしまう人が一定数いるのも現実だろう。そのような現実を乗り越えて、社会に建設的な議論を拡げるために、全世代が思いを巡らすべきではないか。そして、その先に、著者がいうような「社会疫学的な思考」での議論がより活発化していけば、それはどんなに有効で楽しいだろうか。
 さて、社会へ、政治への関わり方は多様化してきている。著者のように、若手(自分)ならではの社会参画の視点、手法を模索、実践していきたいと思うし、共に刺激しあえる仲間を増やしていきたい。
(県立田奈高校 中尾光信)


ふじだなのほんだなから―県民図書室所蔵の資料案内―(2)
学校史、周年記念誌がおもしろい!(1)

■最も古い高校は?
 冒頭から申し訳ないが、クイズにお付き合いを。「143校ある県立高校のなかで、最も歴史の古い高校は?」
 きっとほとんどの方々は、「希望ヶ丘高校!」と答えるだろう。旧制中学のなかで、神中あるいは一中と呼ばれた希望ヶ丘こそ、創立年が最も古い高校と思うだろう。ところが、あれこれと調べてみると、希望ヶ丘ではなく、実は「秦野高校」なのである。かく言う筆者も不勉強で、20数年前までは知らなかった。
 まずはその歴史を、県民図書室所蔵の『秦野高等学校史』(1986年10月刊)を手掛かりにたどってみよう。秦野高校は戦前、秦野中学と呼ばれていた。ただし、1935(昭和10)年に県立に移管されて改称されたもので、それ以前は県奈珂(なか)中学(29年に改称)と呼ばれ、さらに遡ると組合立奈珂中学との校名だった。そして、前身は1886(明治19)年設立の「三郡共立学校」(後に、中郡共立学校と改称され、関東大震災による校舎倒壊を経て、26年、組合立奈珂中学校となる)にさかのぼることができるので、1897(明治30)年開校の神中(開校時の正式名称は神奈川県尋常中学校)よりも約10年前に開校されたことになる。
 秦野高校では、戦後まもない1951(昭和26)年に創立25周年、76年(昭和51)年に50周年記念式典を実施しているので、どうやら県立秦野中学の誕生を創立(開校)年として計算しているようだ。一方では、96(平成8)年には創立70周年・草創110周年記念式典との名称で記念行事(86年の60周年記念では、草創百年祭とも称し、『秦野高等学校史』を刊行)を行なっている。
■70年代はじめ普通科にも男子校があった!
 このような小見出しを掲げたが、この事実は本文を執筆するにあたって、各学校史を読んでいるなかで初めて知ったことだ。朝ドラの「あまちゃん」流にいえば、まさしく「じぇじぇじぇ!」である。
 戦前の県立旧制中学(男子校)は、全部で10校あった。これらは新制高校の発足(48年)とともに、「高校3原則」により、男女共学となった。一方、横浜平沼女子髙(旧第一高女)をはじめ旧制高女や女学校なども、共学化にともない、1950年、校名から「女子」がとれたのである。
 創立以来初の女子生徒が秦野高校に入学したのは50(昭和25)年で、わずか3名、男子は216名だった。翌51年は7名、その後62(昭和37)年までの13年間で、女子入学者は毎年10名前後に留まった。そして、63年からは実質的に男子校となり、再び共学になったのは74年である。この背景には当時、同じ学区域内に女子校が2校(大秦野、伊勢原)あったことにより、「男子は男子校、女子は女子校に」といった男女別学を指向する地域の事情があったからのようだ。
 ともかくも、今まで見て来たように、63~73年までの間、秦野高校が男子校であったことは事実であり、工業科など専門高校を除けば、普通科高校のなかで唯一の存在であったことになるだろう。
■県営藤棚団地の敷地には戦前、一中の校舎があった
 高校教育会館に用事があって行く場合、大半の方々は藤棚交差点角にある第七有隣堂脇の急坂を登る。そこで、またまたクイズの2問目を出そう。「この急坂の名前は何というか?」
 正解は「神中(じんちゅう)坂」である。神中すなわち一中(現小田原高が開校した1900年に県立一中、さらに1914年の現横浜翠嵐高開校時、横浜一中と改称)への通学路であったことから、このように名づけられた。ついでに記すと、会館からの帰り道、タバコ屋の角を右折して下る坂は「願成寺(がんじょうじ)坂」、会館から野毛山方面に向かって坂を上り下りする(厳密にいえば、下ってから上るのだが)と、さらにもう1つ、「神中坂」以上の急坂がある。これは「尻こすり坂」と呼ばれるそうだ。
 神中坂を上りきった右手(県教育会館の手前)に「桜蔭会館」(神中~希望ヶ丘の同窓会「桜蔭会」事務局の建物)がある。「桜蔭会」という同窓会名は1902年、当時の校長の発案で名付けられたが、校舎周辺(敷地面積は4千坪)にはきっとたくさんの桜の木があったからだろう。旧校歌(1934年制定)の一節には、「御国の精華と花咲き続く 桜ヶ丘の吾等の校舎」(佐佐木信綱・詞、山田耕筰・曲)とあるので、藤棚の丘一帯は神中関係者から「桜ヶ丘」と呼ばれていたようだ。
 桜蔭会館入口のすぐ右手の道路沿いに、「神中・神高・希望ヶ丘高 発祥の地」(98年建立)と書かれた記念碑がある。同会館の前庭には樹齢100年を超える杉(ヌマスギ)の巨木があるが、関東大震災・横浜大空襲から免れた「歴史の生き証人」(生き証木?)である。
■桜ヶ丘から希望ヶ丘へ
 ここでクイズの第3問に移ろう。「希望ヶ丘という校名が先か、駅名(相鉄線)が先か?」 藤棚にあった一中は、45年5月29日の横浜大空襲により、校舎のほとんどを焼失したため、戸部国民学校、翌46年からは六浦(当時は磯子区)の仮校舎への移転を余儀なくされた。藤棚での校舎再建案もあったようだが、敷地が狭く拡張が困難のため断念。現在地を相鉄より寄付され、新校舎の建設工事が進められた。朝鮮戦争の影響で半年遅れとなったが、51年9月に完成し、新校地への移転がようやく実現した

 一方、50年4月には、校名が横浜第一高から新校舎の建設予定地(地番は保土ヶ谷区二俣川町中野原)に因み、希望ヶ丘高と改称された(略称の「神高」はそのまま残す)。生徒会が実施した新校名に関するアンケートでは、桜陵高がトップで、続いて希望ヶ丘高、桜蔭高、希望ヶ丘学園などの案があったという。
 相鉄(同線は神中線とも呼ばれ、当時は単線だった)希望ヶ丘駅の開業が48年5月だから、どうやら駅名の方が2年ほど“先輩”だ。というわけで、第3問の正解は「駅名」ということになる。
■希望ヶ丘と桜丘
 『神中・神高・希望ヶ丘高校百年史』(98年7月刊)は資料編と歴史編との2分冊になっているが、合わせると1200ページ近くになる膨大なものである。その「資料編」から次の第4問を考えた。
 「神中開校時の教員の月俸平均は20~40円。一方、校長は年俸で支払われていたが、いくらか?」
 今回に限り選択肢をつける。次のうち、どれか?〔①700円②800円③900円④1000円〕(正解は文末に)
 一方、「歴史編」では8人の元教員や卒業生が思い出話を含め、「母校」について書いているが、読みごたえのあるものばかりだ。執筆者の1人である作家山本昌代さんは、「平和な時代の希望ヶ丘高校」との一文のなかで、入学後1年間、真新しい桜丘高の制服で通学したと書いていた。「高度経済成長期の希望ヶ丘高等学校」を執筆した高橋勝さん(当時、横浜国大教授。現名誉教授・県教育委員)は、「はじめに」において歌詞の一節まで引用しながら、舟木一夫の「高校3年生」に触れていて、思わず苦笑してしまった。
 高橋さんも筆者も小学区制最後の高校生だが、同時期に、高橋さんは希望ヶ丘、筆者は市立桜丘に通学していたことがわかった。当時の通学区域(62年入学生まで)は、希望ヶ丘と桜丘とを「相互に包括して適用」となっていた。希望ヶ丘=神中(一中)とは全く知らず、中学で「あなたはサクラよ!」と言われ、桜丘に通った。夢もチボー(希望)も恋もない「3ナイ高校生」だった。(クイズの正解は④)
 今回は2校の学校史紹介にとどまったが、次回は他校のものを取り上げる。
(綿引光友・元県立高校教員)


最近の雑誌記事より
 県民図書室で定期購読入している雑誌のうち、いくつかを取り上げます。それぞれの雑誌の掲載内容については、その一部の紹介となります。これらの雑誌は県民図書室前の廊下の書架に並んでいます。ぜひ手にとってご覧下さい。

☆『季刊フォーラム 教育と文化』(2013年夏号 72号 国民教育文化総合研究所)
 特集 2006年教育基本法「改正」以後の検証

☆『くらしと教育をつなぐ We』(2013年8/9月号 185号 フェミックス)
 特集:来て、感じて、伝えてほしい〔お話〕佐藤健太さん、市澤美由紀さん「福島の『これから』を考える旅Re:trip」〔お話〕関根彩子さん「身近な家電メーカーが原発 をつくっている」

☆教育科学研究会編集『教育』(かもがわ出版)
 7月号 特集 地域、子どもが生きる場所
 8月号 特集 負けへんで 大阪の教育・子育て  中嶋哲彦 「橋下徹氏の動機と『成功』の秘訣」
 9月号 特集1 政治が強いる道徳を超えて  佐藤広美 「政治が強いる道徳、政治を破る道徳」
     特集2 スポーツ部活動と体罰  小原 紬 「あの光景を思い出すたびよみがえる恐怖心」
 10月号 特集1 教育費「貧乏物語」  大内裕和 「46歳元同級生 奨学金をめぐる対話」
     特集2 教師のワーク・ライフ・バランス

☆日本教育学会『季刊 教育学研究』(80-2 2013.6)
 <特集 地方自治における教育と政治> 小川正人「『素人』教育委員会と教育長の役割・権限関係の見直し―その論議と改革のオルタナティブ―」

☆『季刊教育法』177号2013.6(エイデル研究所)
 〔特集〕 「カラーリングあふれる時代の頭髪指導」 〔今日の焦点〕大津いじめ自殺事件/障害学生の教 育質保証

☆POSSE(2013年 .6vol.19 NPO法人POSSE)
 特集 ブラック企業の共犯者たち ブラック士業/キャリアセンター/親 児美川孝一郎/居郷至伸/麓幸子/今野晴貴

☆子どもの権利条約総合研究所編集 『子どもの権利研究』(日本評論社)
 第23号(2013.8)特集 いじめ防止・震災復興への 子どもの権利提言

☆『学校図書館』(全国学校図書協議会)
 6月号 特集 学力向上と学校図書館
 7月号 特集 読書指導の新しい形
 8月号 特集Ⅰ 子どもから大人まで楽しめる「絵本」
     特集Ⅱ 自主性をはぐくむ部活動・図書館部
 9月号 特集 児童文学の今

☆『教育再生』(日本教育再生機構)
 9月号 座談会(萩生田光一・小林正・司会 :八木秀次) 「安倍政権における教科書とは 教科書法は制定  できるか―土台から建て直すべき検定制度」

☆『季刊 人間と教育』(旬報社)
 2013 夏 78号 特集 特別支援教育の今を問う
 2013 秋 79号 特集 いま、歴史にどう向きあうか

☆『家族で楽しむ 子ども農業雑誌 のらのら』 (2013年秋号 農文協)
 特集 美人ダイコン VSおもしろダイコン

☆『DAYS JAPAN』(発行編集:広河隆一)
 8月号 実測放射能汚染マップ(福島市、千葉県柏市、千葉県松戸市)/いのち
 9月号 実測放射能汚染マップ(福島県双葉町、大熊町)/海女たちの深き海

☆『世界』(岩波書店)
 8月号 特集 2013年参院選―私たちは何に直面しているのか
 9月号 特集 問われる安倍政権の歴史認識

☆『切り抜き情報誌 女性情報』(パド・ウイメンズオフィス)
 2013. 7 6/1~6/30 特集 ストーカー・DV法改正
 2013. 8 7/1~7/31 特集 2013年参院選

☆『法学館憲法研究所報』(第9号 2013年7月)
 巻頭言 浦部法穂「『改憲』論議と日米関係のあり方を問う」


余瀝
 夏休みに入ってすぐに県立高校の教科書採択問題が起こりました。高校では、学校ごとに学校や生徒の実情に即した教科書を毎年選定してきました。今年度も各学校は手続きを既に終了していました。その段階での実教出版の日本史A・日本史Bに対する突然の「再考」指示は、巻頭久世さんのサブタイトル「政治が教育に土足で踏み込んでくる」を象徴するできごとでした。久世さんの結びは、こんな時代だからこそ「教育実践」が「最大の武器」です。「学校図書館は今…」は現役の学校司書の方々にリレーで寄稿していただく予定です。お楽しみに。県民図書室ホームページのフリーワード検索が便利です。ご活用下さい。


発 行 (財)神奈川県高等学校教育会館県民図書室 http://www.edu-kana.com/
〒220-8566 横浜市西区藤棚町2丁目197番地 電話(045)241-2546 FAX(045)241-2700
編集 県民図書室 樋浦敬子
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